三国志のなかの新野の逃亡戦から赤壁の戦いまでを描いたジョン・ウー監督の最新作、レッドクリフをなんばパークスシネマで観てきました! (注)下記の内容にはネタバレが含まれるので知りたくない人は読まないで下さい。
三国志の内容をある程度知っている人向きの映画ではないかと思いました。登場人物も非常に多く、観る人の予備知識に頼らなければ前後編で上映するにしても個々の人物を深く掘り下げて紹介するのも難しそうでした。漢字文化圏と英語圏では受け取り方が相当に違うと思います。中年の男優さんの出演が多く、その中でハンサムなのは孔明役の金城武さんと周愈役のトニー・レオンさんくらいでしょうか。チャン・イーモウ監督のLOVERSのような色彩的な映像美はなく、土埃の多いリアルを意識した映像が多いです。それなりの役のついた女優さんは劉備の后、孫権の妹君、曹操の寵妃、周愈の妻の4名だけでした。
ロード・オブ・ザ・リングの2や3のような大軍団同士の対決があります。見所は群集による陣立てや戦闘シーンですが、盾に鏡を仕込んで反射光で目くらましで関羽の登場は印象に残りました。ジョン・ウー監督は、黒澤明作品や日本の時代劇にかなりの造詣の持ち主ではないかと思いました。
映像的な面白さを狙った八卦の陣という変な陣形が出てきてその中に敵がむざむざ入り込んでいったり、味方も弓の射線上に入って同士討ちになるようなことをなんでするのかなと思いました。後になって黒澤明の「七人の侍」の最後シーンの分断各個撃破は現実的な戦い方だと思いますが、八卦の陣というのはそれのスケールアップを狙ったものではないかと思いました。
敵もアレキサンダー大王のファランクスの変形のような円陣状の密集陣形とか出てきました。衣装や美術系の映像には日本の文化の影響を受けているみたいなところや歴史考証の変なところも出てきました。 以下に列挙してみます。
白装束で毒を賜った後に斬首みたいな切腹みたいなこと
神社の鳥居が付いたような屋根の家が出てくる
琴の共演の演奏技法がギターみたい
(これは中華圏の国民的作家、金庸の「笑傲江湖」からのイメージかな)
曹操の前で蹴鞠といいつつもサッカーを軍隊が興じている
藁を用いて毛利三本の矢のたとえみたいなことが出てくる
必殺仕事人みたいな殺陣が出てくる
三国志の関係で読んでみて面白かった本は、最近の作品では酒見賢一氏の「泣き虫弱虫諸葛孔明」と「泣き虫弱虫 諸葛孔明 第弐部」 です。レッドクリフと内容的に重なる新野から赤壁の戦い直前までは第弐部のほうに詳しく描かれています。酒見賢一氏の「墨攻」は劇画や映画化もされています。
この作品は、三国志のパロディーというかエンターテインメントに徹しているようであっても著者は三国志関係の研究書もかなり読破されており、その薀蓄も豊富に取り入れられています。魏呉蜀の陣営のカラーの違い、劉備玄徳、関羽、張飛、孔明がどうしようもない人だったり、かなりアブナイ人として描かれていて電車の中で笑いをこらえるので必死でした。三国志の登場人物のキャラクター造詣は美化されすぎた他の作品よりもこちらのほうが現実に近いのではないかと思いました。ウルトラマンからエヴァンゲリオンなどのネタも作品中には盛り込まれていて一筋縄ではいかないけれど受ける人には受ける傑作だと思います。
酒見賢一氏の劉備や関羽の解説的なエッセイが「中国雑話中国的思想 (文春新書 596) 」にも盛り込まれており、こちらは新書版で中国拳法(特に意拳について詳しいです、酒見賢一氏は松田隆智氏とか甲野善紀氏の著書も読んでいそう)や神仙思想なども題材で取り上げられていてお勧めです!
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