2008年5月20日火曜日

スピーカーの超高音域の再生機能の意味とハイパーソニック効果の謎!

PCスピーカーや一般の高級スピーカー等でどうして人間には聴こえない超音波領域を含む超高音域の再生機能を付加しているのかが気になったので調べてみました。

そこで見つけたのがこの本です!

「プロが答えるサウンド&レコーディング Q&A 百問百答 FAQ集」
(2003年、株式会社リットーミュージック)

 スタジオエンジニア用の業界雑誌?の編集部に集まった素朴な疑問や解決法の提示を目指してコンパクトにまとめた本だそうです。1ページの上段に質問と下段に専門家の回答が載っているという構成で、すんなりと読めました。専門機器の解説はよくわからないのでスルーしました。

 35ページにあった小川ひろしさんの書かれた回答のなかに高音域に関するこちらの疑問に対する回答がありました。質問は、「サンプリング周波数96kHzで録音しても、48kHzあたりを余裕をもって再生できるヘッドフォンやスピーカー、または録音できるマイクってあるんですか?」で答えは「超高域まで録音/再生できる製品はあります」とシンプルなのですが、その回答の後の延々と続く薀蓄のなかに知りたいことが載っていました。以下に抜粋します。

 「従来、人間の可聴帯域の上限は20kHzとされていましたが、最近ではさらに上の帯域、生楽器や自然界には存在している超高域成分の有無が、人の情緒や感性に大きく作用していることが分かってきました。超高域成分が音楽や環境音などの可聴帯域内の音に加えられると、明らかに音の質感が変わってくるのです。SACDやDVDオーディオが超高域再生を目指しているのも、そんな事情が理由の1つです。」という部分です。

 しかし上記の超高音域が情感に影響するという典拠が何なのか明記されていなかったのでさらに調べたところ、次の本が元ネタであると思われました。

「音と文明―音の環境学ことはじめ 」 大橋 力 著 (2003年)

 「音の環境学」という新しい学問分野の創設を宣言した本で、PET(陽電子放射トモグラフィー)などの脳科学研究の最新機器などを駆使して熱帯雨林の音やインドネシアのガムラン音楽が脳に与える影響を調べたそうです。

それによると22kHz以上の超音波を含む音楽を聴くと、大脳の聴覚野と大脳基底部の情動を司る部位が同時に刺激され、快感時に発生するアルファ脳波が検知され、これをハイパーソニック効果と名付けたそうです。空気伝導による超音波は人間には検知出来ないという従来の音響学の常識を打破してアナログ世界の持つ本質的重要性を明らかにした本だそうです。

 情緒や感性というのは数値化できないと思うのですが、それを脳波で置き換えて調べているのが面白いところだと思います。聴こえない音でも体は感じてしまうのかなと思うとなんとなく納得できました。小川のせせらぎや、森林のなかの風の通る音とかの自然音や、夜にコウモリが飛んでいるところに行くと心が元気になるみたいな話と共通するのかな。

 このハイパーソニック効果についてネット上でさらに調べていくとNHK関係のオーディオマニア?の方のホームページにてハイパーソニック効果に関する追試(PETを用いない聞き取り標本調査)に行き当たりました。相当に詳しい方でハイパーソニック効果という仮説に対して実験的に異議を唱えています。
http://www.ne.jp/asahi/shiga/home/MyRoom/highlimit.htm#HPsonic
 この方はNHKの技術研究所で、20kHz以上の成分をカットした楽音と100kHz近くまでの超高域成分を含む楽音を比較して識別可能かどうかをテストしたそうです。その結果、17才の少女の1人が有意の確率で超高域の音を聞き分けているくらいで、「極めて例外的な能力を持った人が識別出来る可能性を完全には否定できないが、普通の人(といってもこの場合音にうるさいベテランばかりだが)にはまず不可能である」という結論だったそうです。

 可聴周波数の上限は20kHzで、実際には年齢にもよりますが、12~15KHz 程度だそうです。上限周波数は年とともに大きく低下し、成人では耳の良い人で15kHz くらい、普通は13kHz 辺りでほとんど聞こえなくなると、悲しいことが書いていました(まだ蚊の鳴き声は聴こえますがいつかなくなってしまうのかと考えると・・・)。

年齢と可聴上限周波数のグラフが載っているサイト(英語です)
http://saunderslog.com/2006/06/12/the-mosquito-ring-tone-this-adult-can-hear-it/
 おそらくハイパーソニック効果というのはあるのだろうけど、こうした可聴能力には個人差が相当にあるのかと思いました。
とにかくスピーカー再生機器での超高域再生機能のメリットをまとめると、

(1)超高音域までカバーしているなら可聴域内の高音域の再現のゆがみが少なくなる点
(2)もし存在するならば、ハイパーソニック効果(しかし、個人差が大きく、対象であるCDが20kHz以上の音をカットしている再生媒体なら意味なし)

という結論みたいです。
 また、「プロが答えるサウンド&レコーディング 」では聴き取り能力の訓練法についても書かれていました。スピーカーを用いてどこにどの楽器があるのかをイメージで聞き分けたり、ある音域だけイラコイザを使って絞って聞分けていると楽器別や立体的に聴くことができるようになるそうです。

 マスタリング・エンジニアという職業の人はこうした音のバランスを聞き分ける耳を持っているそうなのですが、これにも音の低減を体で感じる体感型と、音を見る視覚型に分かれるそうです。このなかでもマイケル・ジャクソンのCDも手がけた天才的なミキサー、ブルース・スウェディンは音が色と置き換わって見えると言っているそうです。これって竹仲絵里さんが主題歌を手がけた「ギミー・ヘブン」という映画のキーワードであった共感覚をもっている人ではないかと思いました。


このブログの関連記事
日本橋でロジクールのPCスピーカー Z4
日経WinPC 4月号のオススメPCスピーカーの記事について
大阪市内のタワーレコードとCD購入について!
AppleのiTunes CardとGeniusとアートワーク設定について
大阪ハイエンドオーディオショウ 2009 at ハートンホテル心斎橋 別館!(心斎橋)

10 件のコメント:

たまのママ さんのコメント...

内容が難しくてあまり理解できてないですが(苦笑)興味のある内容記事でした。

そうそう、随分前に娘から『この音楽聞いてみて、若い人しか聞こえないらしい』と言われ、聞いてみたけど何も聞こえなかった。。でもその時、娘は確実にその音楽が聴こえていたそうです。年齢によって、聞こえる??周波数が違うっていうのをその時知りました。
不思議です。。

JJ さんのコメント...

英語の発音には高音域の音の変化で別の意味の単語が多くて子供の頃に慣らされていないと識別して理解するのが困難になるというのも聞いたことがあります。
 
「音と文明」という本が日本の音響メーカーの開発の方向性に影響を与えていたとしたら、反証実験の結果はインパクトがあったのではないかと思います。でも実力のある演奏者の生の演奏や歌声には再生機器は決してかなわないと思います。
 

JJ さんのコメント...

大橋 力氏の「音と文明―音の環境学ことはじめ 」のなかで、実験における脳波のノイズの人による個体差について言及していて、何人も測定した中からノイズのない人達だけをピックアップしてデータを処理しているようなことが書かれていました。その時点(無作為抽出ではない)で研究をまとめた人の恣意が入り込んでいる可能性があると思います。そういうことを正直に書かれているのは、無作為に選んだ標本集団からは再現性が取れないということを暗示しているのかもしれません。 

JJ さんのコメント...

「やっぱり楽しいオーディオ生活」 (アスキー新書)の中で著者の麻倉 怜士氏はマスタリングのときに超高音域を電気的なフィルターで消去する過程で可聴音域の劣化が起こる可能性と、倍音によって超高音域の音も可聴音域と重なっている場合は可聴できる可能性があり、そのことが空気感、臨場感につながっていると考えているようでハイパーソニック効果に対する言及はありませんでした。

 倍音について調べてみるとWikipediaの「天使の声」について記述からいきついた内田樹先生の「倍音的エクリチュール」の記事が面白かったです。倍音を使う巫女系歌手として中島みゆき、ユーミン、美空ひばりを引き合いに出されています。http://blog.tatsuru.com/2007/06/22_2121.php

匿名 さんのコメント...

「ハイパーソニックエフェクト」は権威のある科学論文誌に掲載されています。この現象は真実ではないでしょうか。

http://www.dcaj.org/h17hyper/hypersonic.html

http://www.dcaj.org/h17hyper/17hyper.pdf

JJ さんのコメント...

 論文が科学論文誌に掲載されたことは、論文が真実であることを実証されたことを意味するものではありません。その雑誌の採用基準や科学的なフォーマットが逸脱していなければ掲載されます。

 論文のなかには第三者が追試して再現できるように方法の詳しい記述が求められます。論文が掲載されることは、第三者の追試を経てそれが真実として認められていく過程の最初の一歩に過ぎません。

 PubMedという学術論文の検索サイトを用いて"hypersonic effect"というキーワードで検索したところ、10年前の2000年の大橋らの発表以後は彼らのグループ以外ではハイパーソニック効果に関する報告はないようです。今のところ対外的には否定も肯定もされていないのではないでしょうか

The role of biological system other than auditory air-conduction in the emergence of the hypersonic effect.

Oohashi T, Kawai N, Nishina E, Honda M, Yagi R, Nakamura S, Morimoto M, Maekawa T, Yonekura Y, Shibasaki H.

Brain Res. 2006 Feb 16;1073-1074:339-47.


Inaudible high-frequency sounds affect brain activity: hypersonic effect.

Oohashi T, Nishina E, Honda M, Yonekura Y, Fuwamoto Y, Kawai N, Maekawa T, Nakamura S, Fukuyama H, Shibasaki H.

J Neurophysiol. 2000 Jun;83(6):3548-58.

はやぶさ さんのコメント...

日本ビクターのK2テクノロジー(秘伝のタレ)というのは、デジタル音データの凸凹を変換処理してアナログ音データのように滑らかにし、さらに実際には元の音楽データには存在しない100kHzまでの超高音域を予測して後付けして合成しているようです。これはハイパーソニックエフェクトまたは倍音効果を根拠にして開発された技術なのでしょうか

JJ さんのコメント...

テレビなどの映像の方でも普通の荒い画像情報のすきまを補完してハイビジョン映像化するなどのエンジンが積まれている場合がありますが(YouTube対応を記載しているようなインターネットテレビ等)、超高音域の方の後付は何かの根拠がないとここまでしようとは思わないでしょうね。音楽CDの制作で原音に忠実にあるがままの音を収録するのであれば分かるのですが、普通のCD音源に対して可聴域にない人工音の後付は何か不自然な気がします。

小野 さんのコメント...

はじめまして、JJさん

 超高音域を付加して音源を再生可能なフリーの音楽プレイアーのソフトウェアとしてFrieve Audio があります。Vectorでダウンロード可能でシェアウェア版Frieve Audio M-Classとフリー版があります。このソフトには「設定」のなかの「環境の設定」の「フィルタ」の項目に「Hyper Sonic Creation」と超音域付加の程度をパラメーター設定できる機能があります。これは高域の失われたMP3ファイルに擬似的な高域を付加することで、聴感上の音質を改善機能だそうです。一度、試してみられてはいかがでしょうか。

http://www.frieve.com/frieveaudio/

JJ さんのコメント...

はじめまして、小野さん

 遅レスすいません。手持ちのスピーカーは超高温域をカバーしていないようなのでインストールしても効果は体験できないように思います。ご紹介ありがとうございました。
 
 最近発表されたAndroidを搭載したウォークマンのフラッグシップモデルでは定番のノイズキャンセリング以外にも独自の高音域補完技術「DSEE」(Digital Sound Enhancement Engine(デジタルサウンドエンハンスメントエンジン))というものが採用されるという話です。これは音源の圧縮時に取り除かれる高音域の音源を補完するということなので、おそらく高音域(超高温域?)の後付け技術であり、目指している方向性はFrieve Audioと同じですが、ハードに組み込まれたのではないかと思います。